冬は釣りもシーズンオフ、という人は意外に多いようだ。そんなときにしておきたいのが道具の手入れ。今回はスピニングリールのメンテナンス方法を解説する。
目次
工具を使わないメンテナンスに挑戦してみよう
ひと口にメンテナンスといっても、簡単な注油から本格的な分解整備までその内容はさまざま。
今回紹介するのは誰にでもできる、工具を必要としない簡単なメンテナンスだ。
ただし、これは調子を維持するためのもので、すでに調子の悪いリールを復活させるものではないのでご了承願いたい。
メンテナンス=水洗いではダメ
リールには多くの金属部品が使われているため、海水が付着したまま放置すれば当然のように錆が発生する。
また、結晶化した塩分が作動不良を引き起こすことも多い。
淡水の場合は海ほどのダメージはないにしても、砂やほこりなどの影響は少なからずある。
そのためメンテナンスの基本は水洗いとよく言われるが、実はこれが間違いの元。
その理由は、リールにはオイルやグリスなどの油脂類が使われているためだ。
これらは潤滑だけでなく、水や異物の浸入を防ぎ、錆の発生を抑えるという大切な役割を担っている。
冬でも快適に使えるよう、リールには低温流動性の高い油脂類が使われるため、大量の水で洗えば簡単に流失する。
中には一緒にお風呂に入るなんて人もいるが、これはもう完全にアウトだ。
油脂類は熱で軟らかくなるため、お湯で洗えばさらに油分は流失しやすくなる。
また、水にドボンと浸ける人もいるが、これもアウト。
お湯ならなおさらだ。
汚れは湿らせたタオルや歯ブラシ、綿棒で落とそう
水圧がかかれば水は簡単にリール内部まで浸入して、油脂類を劣化させる。
見た目は確かにキレイになるが、洗えば洗うほど内部は蝕まれていくのだ。
分解しないで外部から注油できる部分など、たかが知れている。
完全に分解して整備するという場合を別にすれば、水洗いは可能な限り避けた方がいいだろう。
しかし、だからといって汚れたままでOKという訳ではない。
汚れと一緒に必要な油分まで落としてしまっては意味がないのだ。
使用状況が堤防釣り程度なら、湿らせたタオルで拭くだけでも汚れは落とせる。
手の入らない部分は、歯ブラシや綿棒などを活用しよう。
水を使って洗う場合の注意点
水をかけるのは汚れがひどい場合や、船やウエーディングなど海水を浴びるような条件で使用した場合だけ。
この場合も、細部に入り込んだ塩分を浮かせることができればそれで十分だ。
手順としては、まずドラグノブを締め込み、スプール側を上にした状態で上から弱いシャワー(私は霧吹きを使用している)をサッとかける。
ドラグノブにパッキンのない機種は締め込んでも無意味なので、ドラグノブを避けて斜めから水を掛ける。
いずれの場合も下側(ローターの裏側)から水をかけるのはNG。
表面の塩分は簡単に溶けるので、軽くぬらす程度で十分だ。
次にブラシなどで汚れを浮かせ、これまた弱いシャワーでサッと流す。
あくまでも「サッと」だ。
あとはリールを軽く振って水気を飛ばし(リールまで飛ばさないように注意)、乾いたタオルで拭き取れば洗浄は完了。
注油をしてみよう
この状態で乾燥させたら、次は注油。
使用するのはリールメーカーから発売されているスプレー式のオイルとグリスだ。
両者の違いは、簡単に言えばその粘度。
回転を重視する部分や頻繁に注油できる部分はオイル、耐久性を重視する部分や負荷のかかる部分はグリスと使い分ける。
まずはハンドルノブ、ハンドルの折り畳み部、ラインローラー、ベールのピボット(回転軸)、レバーブレーキの機種はそのピボットなどの可動部にオイルをスプレー。
隙間からひと吹きすれば十分だ(ダイワのマグシールドは注油禁止なので要注意)。
機種によっては、ハンドルノブやラインローラーに注油穴が設けられたものもある。
はみ出したオイルはほこりが付着する原因となるため、きれいに拭き取っておこう。
次はドラグノブを緩めてスプールを外し、シャフトの根元にオイルを1滴。
スプールの受け部にベアリングのあるものは、そこにも1滴注油する。
続いてハンドルを外すと内部にベアリング(または樹脂ブッシュ)が見えるので、左右にオイルを1滴ずつ。
グリスをさして仕上げ
そして最後はグリスの出番。
塗るのはドラグノブの裏側、ドラグワッシャーとの当たり面だ。
ドラグノブにパッキンがあれば、そこにも薄く塗っておくといい。
指や筆などを使うと飛び散らずキレイに塗れる。
あとは元通りに組み立てて出来上がり。
注油の頻度は釣行回数にもよるが、サンデーアングラーであれば月に1~2回程度で十分だろう。
雨のなかで使ったときなどは、忘れずに注油しておきたい。
メンテナンスの際、あわせて確認したいのがスプールエッジの傷だ。
キャスト時にラインを傷める原因となるため、指で触って段差があれば補修しておこう。
傷の大きさにもよるが、まずは240~400番程度の耐水ペーパーで傷を滑らかにし、最後は600~1000番で仕上げるといい。
さて、次回は両軸リール編。
こちらの方もお楽しみに。
<週刊つりニュース中部版 APC・浅井達志/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2018年1月5日号に掲載された記事を再編集したものになります。