大阪湾の各波止にタチウオの回遊が始まり、週末ともなると夜の波止は繁華街のようにネオンならぬ電気ウキで水面が飾られる。しかしこの時期に面白くなるのはタチウオだけではない。実は時間帯を同じくして狙えるアナゴもこの時期に活性が上がる。その理由と釣り方を紹介してみよう。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
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タチウオシーズンがアナゴの好機
秋の大阪湾の波止を代表するターゲットと言えばタチウオ。半夜釣りにも関わらず、人気釣り場では昼ごろからでかけてもすでに釣り座を確保する事すらできない状況だ。そんな中、タチウオ釣りほど釣り座を広く取らなくても十分に釣りが楽しめ、タチウオ釣りの面々とはあまり釣りが重ならないのがアナゴ釣り。特にこの時期はアナゴの活性が上がるのだ。
アナゴは低水温にも強いため、大阪湾では少々水深のある護岸なら年間を通じて狙えるターゲットだ。基本的に日中は障害物などので物陰に潜み、日が暮れる頃になるとエサを求めて徘徊する。そのため、波止からの釣りの時間帯は、日暮れ以降。特に日暮れ直後から時合いがやってくるのはタチウオと似ている。
アナゴは肉食性
アナゴは基本的に肉食で、小魚や甲殻類、貝類、ゴカイ類などを好んで食べる。ここで注目したいのが小魚である。フィッシュイーターと呼ばれる肉食魚(魚食性の魚)の中には、死んだ魚は食べず、生きた魚を主に食べる種類もあるが、アナゴに関しては生きていても死んでいても特に関係なく食ってくる。
そのため、釣りエサ店で手軽に入手できるゴカイやスーパーで売られているサバ、サンマなどの切り身など、比較的取り扱いやすいエサが使えるのが魅力だ。
タチウオ釣り場がアナゴポイント
この時期、波止から狙うタチウオのエサと言えば、キビナゴ、サンマが主流だろう。タチウオ狙いの釣行でエサが余った場合、持ち帰って冷凍する人もいるが、そのまま捨ててしまう人も多数いるハズ。
もちろん、しょっちゅうタチウオ釣りに出かけ、エサが余っても、持ち帰って冷凍する人は話は別だが、年に何度も釣行を重ねる事が予定できなければ、余ったエサを捨ててしまう人が多いのもタチウオ釣りの特徴だろう。
エサの捨て場はゴミ箱ではなく、もちろん、釣り座の目の前の海。そんなエサが上から連日のように降ってくる、タチウオの人気釣り場は、アナゴのエサ場としても一級ポイントになっている。日中にアナゴが身を潜める事ができるような捨て石、敷石や障害物などが近くにある場所なら、これはもうアナゴ釣りにとっては最上級のポイントなのだ。
例年の傾向から考察
その証拠に、年中アナゴ釣りをしている私の傾向では、タチウオが釣れ出すまではアナゴは釣れるが半夜釣りで5、6尾釣れれば上等なポイントでも、タチウオシーズンに入ってしばらくすると、突然アナゴがよく釣れるようになる。それも半夜釣りで20~30尾とケタがかわってくるのである。
そして、冬場にタチウオのシーズンが一段落した後もしばらくは釣れ続き、徐々に数が減ってきてアベレージ的な釣果に戻るという経験を何年も繰り返している。時期的なものかと思いきや、それまでは平均してどこでも釣れるアナゴが、タチウオの人気釣り場ほどシーズンに入ってからの上昇率が凄い事になっているのだ。
タチウオも面白いが、タチウオシーズンのアナゴ釣りがオススメな最大の理由が、「タチウオのエサのおこぼれを貰ってアナゴが集まる」からだ。
オススメの釣行時間帯
さて、私もこの時期はわざと人気の高いタチウオ釣り場を狙ってアナゴ釣りに出かけるのだが、やはりタチウオ人気は凄く前述のの通り、週末などはゆっくり出かけていては竿を出すスペースすらない人手に見舞われる事も多い。
そこで、ワザと時合いをズラしてでも、竿を出せるスペースを確保するために、タチウオの半夜釣りの時間が終わる頃を見計らって出かける事が多い。具体的には現地に午後9~10時頃に到着すれば、半夜釣りの人がチラホラと帰り始めているので、問題なく釣り座を確保できている。
そこから2、3時間も竿を出せばアナゴは釣れる。と言うよりもこの時期はこぞってタチウオ釣りに興じる人が並ぶので、アナゴを釣る人が居ないため、常にサラ場が広がっているのだ。
狙うポイントは足元
釣り座が確保できたらいよいよ釣りのスタートだ。アナゴ釣りはチョイ投げか、足元からやや水深のある大型港湾部なら波止のキワキワ作戦がいい。
波止際には防波堤を安定させるための敷石が入っている事が多く、それがアナゴの住みかやエサ場となっているので、そんな場所では遠くへ投げても逆にアナゴの魚影は薄い。特に夜はアナゴがエサを求めて障害物の周りへ徘徊してくるのでそれを待ち伏せればいいのだ。
特にタチウオ釣り場では、余ったエサを波止際、足元に捨てるのでそれを狙って寄ってくるアナゴを狙うには、投げる必要はほとんどない。竿下でも十分に釣れるので、結果としてタチウオ釣りの人とは狙う場所、釣り方が分かれる事になる。
沖を狙うために仕掛けを投げてしまうと、潮によって流されてくる電気ウキの仕掛けや、キャストして引きずってくるテンヤの仕掛けが絡んでのトラブルに発展するし、足元の方が釣れるのだから投げる必要は全くない。
アナゴ釣りの仕掛け
チョイ投げも波止際の釣りも仕掛けは同じでよく、シーバスロッドやルアーロッド、ロックフィッシュロッドなどで、テンビンにオモリは3~5号の軽めを推奨する。道糸はナイロンライン2~3号、もしくはPEライン1号程度でPEライン使用時には先糸としてフロロカーボンライン3号を1mほど接続している。
仕掛け部分は基本として2本バリを使用。私の場合、アナゴの仕掛けは50cmほどのハリスの両端に丸海津7~9号のハリを結び、全体の3分の2程度の部分で折り返して、折り返した場所でチチワを作る。こうする事で、ハリスの長さが約1対2に設定された2本バリ仕掛けが完成する。チチワ部分をスナップでテンビンに付ければ完成だ。
ベストエサはキビナゴじゃない?
エサはもちろん、マッチ・ザ・ベイトでキビナゴも良いが、キビナゴの場合はやや身が硬く弾力性がないため、アタリがあっても食い込みに至らなかったり、ハリから身が取られてしまう事が多いようだ。その点、サンマやサバの切り身は皮が硬い事もあり、身も柔らかい割りには粘りがあるので、アナゴと駆け引きがしやすい。
前アタリをとることが重要
アナゴはアタリを見ていると、最初にチョンと突いて、エサである事を確認したら、その場で居食いするような感じで、ハリ掛かりすると嫌がって暴れる。その時にアタリが明確に出る。ただ、本アタリの前に引っ張るだけ引っ張って、違和感を感じたらエサを放す事も多いので、アナゴを確実に掛けていくコツは前アタリを取る事である。
穂先をよく見ていると、波の揺れとも思えるような、フワリとした変化や、ごく小さくコツッと穂先が揺れる前アタリが出る。それが分ければ竿を手持ちにして、駆け引きの始まりだ。引かなければ少し引っ張ってやる(と言っても距離にして5cmくらい)。すると、アナゴがエサに付いていれば、ククッと持ち込む事が多いがまだアワせない。軽く引っ張るようならそのまま送り込んで、十分送り込んでからアワせると百発百中でハリ掛かりする。
この釣り方だと、アナゴが勝手に掛かって嫌がり、身体を回転させる隙を与えないので、仕掛けがグチャグチャに絡まる事がほとんどない。仕掛けが絡まないので必然的に効率よく釣れると言う寸法だ。
シーズンの目安
シーズン的にはタチウオの人手が少なくなって、エサが入らなくなってからしばらくはアナゴが釣れ続き、徐々に釣果が下がってくるので、タチウオのシーズンが終わったからと言って、すぐにアナゴシーズンは終わらない。
逆にタチウオのシーズンにちょくちょくと人気の高い、人手が多い釣り場を見極めて、人が少なくなった頃に出かけるののもアリだ。
タチウオシーズン=アナゴの好期、タチウオの人気釣り場=アナゴの好ポイントという方程式を見極めて、晩秋のアナゴ釣りに興じてみよう。
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>