真っ黒な『カラスミ』が誕生 黒いワケは原材料のサカナにあり?

真っ黒な『カラスミ』が誕生 黒いワケは原材料のサカナにあり?

日本産大珍味のひとつカラスミといえば「赤茶色」や「オレンジ色」をしているものですが、いま「黒いカラスミ」がちょっと話題になっています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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「黒いカラスミ」が誕生

山形県鶴岡市にある加茂水族館。クラゲの大きな水槽が有名なこの水族館で、先日、新たな「名産品」が生まれ話題になっています。

その名産品とは、日本三大珍味のひとつで、魚卵を味付けして干し上げる食材「カラスミ」。しかしもちろん普通のカラスミではありません。

真っ黒な『カラスミ』が誕生 黒いワケは原材料のサカナにあり?マダラ(提供:PhotoAC)

一般的なカラスミが「ボラ」の卵巣で作られているのに対し、今回のものは「マダラ」の卵巣で作られているのです。(『寒ダラのカラスミ「出羽唐墨」完成 鶴岡・加茂水族館内レストラン』山形新聞 2023.3.30)

なぜ黒いのか

マダラは、鶴岡市を含む庄内地方における冬の名物のひとつ。その卵巣も、郷土料理「寒鱈汁」の具材として親しまれている存在です。

今回開発されたカラスミ「出羽唐墨」の最大の特徴は、真っ黒な見た目。「カラスミ」の語源になった「唐墨(中国の墨)」になぞらえ、黒い色になるよう工夫したのだそうです。

真っ黒な『カラスミ』が誕生 黒いワケは原材料のサカナにあり?調理されたマダラの卵巣(提供:PhotoAC)

マダラの卵巣は皮が黒く厚みがあり、卵が小粒であるのが特徴。たらこや明太子に加工されるスケトウダラの卵巣と比べると味の評価は劣るとされますが、その小粒さゆえ、カラスミにした際には本家同様のねっとりとした食感が楽しめます。

海外にもある「黒いカラスミ」

さて、今回の出羽唐墨はともかく、日本ではカラスミと言えば基本的にボラで作られるものです。しかし実は、世界ではそういうわけではありません。

例えばイタリアには「ボッタルガ」と呼ばれるカラスミと同様の魚卵加工食品があるのですが、その原料にはマグロなどが用いられることが多いです。同じく地中海に面したスペインやエジプトにも同様のものがあり、カラスミのふるさとは地中海沿岸であると考えられています。それがシルクロードなどを通って伝わり、日本へは安土桃山時代頃に中国から伝来したとされています。

真っ黒な『カラスミ』が誕生 黒いワケは原材料のサカナにあり?油魚子(提供:茸本朗)

さて、日本のお隣にある台湾には、今回紹介した「出羽唐墨」と同じく「真っ黒なカラスミ」が存在しています。しかしその原材料はマダラではなく、アブラソコムツという魚の卵巣です。

アブラソコムツは最大で2mほどにも及ぶ大型魚で、その卵巣から作られるカラスミ「油魚子」は中までしっかりと黒い色合いです。油魚子は大量の脂肪分を含み、本家ボラのカラスミよりネットリ感が強いのが特徴となっています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>