アナゴの漁獲量が大阪湾で40分の1にまで激減 そのワケとは?

アナゴの漁獲量が大阪湾で40分の1にまで激減 そのワケとは?

減少が叫ばれているウナギのかわりに「アナゴを食べよう」と言われることがありますが、じつは今、そのアナゴも減少していると見られています。

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その他 サカナ研究所

アナゴの漁獲量が激減中

すしや天ぷらなど、和食の食材として欠かせない魚であるアナゴ(マアナゴ)。日本近海の広い範囲に生息し、市場でこれを見ない日はないと言うほどたくさん流通しています。しかしそのマアナゴの漁獲量が近年、大阪湾などの主要漁場で激減しています。

アナゴの漁獲量が大阪湾で40分の1にまで激減 そのワケとは?マアナゴ(提供:PhotoAC)

大阪湾では40分の1

大阪府の漁師には「昔は夏場にも捕れていたが、今はほとんどど獲れないので冬場しか漁を行わない」という人もいるといいます。実際、農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、大阪府のあなご類(マアナゴ、クロアナゴ)の漁獲量は1996年は743tを記録しましたが、その後は年々減少。2019年には18tと、約40分の1にまで激減しています。

この傾向は大阪湾だけのものではなく、日本全体でも2019年の漁獲量は1995年の約4分の1(3,329t)にまで減少しているといいます。

アナゴ減少のワケ

マアナゴはニホンウナギと同様に、日本のはるか南の海域で産卵を行うと考えられています。現在の漁獲量減少は、南方沖で生まれたマアナゴの稚魚自体の数が減った、稚魚は減っていないが日本沿岸にたどりついた後にうまく育たない、あるいは海流の変化などで稚魚がたどりつく場所が変化した、などといった理由が考えられています。

アナゴの漁獲量が大阪湾で40分の1にまで激減 そのワケとは?アナゴの漁獲量は右肩下がり(提供:PhotoAC)

これらは現在、同様に資源量が減少しているニホンウナギとほぼ同じといえます。ただその一方で、マアナゴはウナギと異なり、地域によっては漁獲量が落ちていないところもあり、その理由が説明できていません。

マアナゴの生態にはわかっていないことも多く、専門家でも原因を測りかねている状態なのだといいます。

意外といるアナゴの「代用魚」

資源量の減少に伴い、マアナゴの価格は現在上昇を続けています。例えば、東京湾の誇るブランドアナゴ「小柴のアナゴ」は、この10年間で2~3割以上の価格上昇を見せています。

その一方で、より安価な「代用アナゴ」も流通するようになっています。例えば、安価な回転寿司の「煮あなご」には、南米ペルーで漁獲されるウナギ目の魚「マルアナゴ」が用いられていることがあります。また、日本近海のやや深い海に生息するウナギ目の魚「イラコアナゴ」が用いられることもあるようです。

アナゴの漁獲量が大阪湾で40分の1にまで激減 そのワケとは?その「煮穴子」マアナゴじゃないかも(提供:PhotoAC)

これらの魚はマアナゴと比べるとやや骨が固く身も薄いですが、味が良いために煮穴子、焼き穴子などに加工されて流通しています。知らずに食べたことがある人もきっと多いのではないでしょうか。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>