利根川名物「ハクレンジャンプ」の季節到来 実は食べて美味しい外来魚?

利根川名物「ハクレンジャンプ」の季節到来 実は食べて美味しい外来魚?

利根川で今年も「初夏の風物詩」ハクレンジャンプが観測されました。彼らは実は食用のために移入された「外来魚」です。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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その他 サカナ研究所

利根川名物「ハクレンジャンプ」

利根川の中流域で、とある魚が起こす現象が「初夏の風物詩」として親しまれているのをご存知でしょうか。「ハクレンジャンプ」と呼ばれるその現象が、今年も確認され、話題となっています。

利根川中~上流域を管轄する「国土交通省利根川上流河川事務所」のTwitterアカウントが、その様子を動画でアップしています。連日の雨で濁流気味の利根川の川面から、1m以上ある巨大魚が1m以上も飛び出す様子が観察できます。

利根川名物「ハクレンジャンプ」の季節到来 実は食べて美味しい外来魚?ハクレン(提供:茸本朗)

ハクレンジャンプでは、ときに数十匹の群れが狂喜乱舞するかのように飛び回ることもあり、大変な迫力があります。特によく見られる埼玉県久喜市(旧栗橋町)と茨城県古河市の間にかかる利根川橋周辺では、この光景が観光資材の一つとなっており、過去には見物客を相手にした出店が出るほどの人出になることもありました。

なぜ跳ね回る?

ハクレンがなぜこのように飛び跳ねるのか、その理由は実は未だにはっきりしていません。

彼らは利根川においては、5~7月頃にかけて産卵を行うため、その産卵行動に伴うものとも言われています。ただ一方で、産卵しないときもジャンプする例があり、関連性は不明です。ただ、ジャンプの観察例が多くなると産卵が近いことが経験的に知られているため、全くの無関係とは言えないと思われます。

利根川名物「ハクレンジャンプ」の季節到来 実は食べて美味しい外来魚?顔つきが独特なハクレン(提供:茸本朗)

同様に飛び跳ねる理由がはっきりしていない魚に「ボラ」がいますが、ハクレンが跳ねる理由もボラ同様に「驚いたから」「寄生虫を落とすため」だという人もいるようです。

食材としてのハクレン

このように、地域の風物詩として定着しているハクレンですが、彼らは実は中国原産の外来魚です。原産地では四大家魚といわれるメジャーな食用魚のひとつで、日本へもはじめは食用魚として移入され、各地の河川に放流されました。

しかしその後我が国では肉食化が進んだため魚離れが起こり、またそもそも淡水魚を食用とする機会自体が減ってしまったこともあって、食用魚としては定着せず。利根川など長大な河川でないと繁殖できない生態上の理由もあり、多くの場所で忘れ去られた存在となりました。

利根川名物「ハクレンジャンプ」の季節到来 実は食べて美味しい外来魚?ハクレンの切り身(提供:茸本朗)

しかし現在でも、生息域の利根川下流域では、食用にされる例がないわけではありません。実際のところハクレンは、コイ科魚の中でも味は良い方で、特に脂の乗った腹身はブリのような食感があり美味です。釣り人や漁師の中にはフライや中華風あんかけのほか、時には洗いなどで食べる人もいるようです。

ただし、コイ科魚だけあって小骨はとても多く、通常の料理では食べにくいという事実もあります。また、水を濾過して植物プランクトンを摂取する性質があることから、水質の影響を受けやすく、水質の悪い水域に棲んでいるものは臭みを溜め込んでしまいます。臭いところの個体はとても食べられないため、美味しく食べるには比較的水質の良い場所で捕獲するのがよいでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>