最も身近なフグ『クサフグ』の産卵がピーク 小さい身体に猛毒あり?

最も身近なフグ『クサフグ』の産卵がピーク 小さい身体に猛毒あり?

釣りをしているとしょっちゅう見かけるフグ・クサフグ。可愛らしい見た目である一方、しつこいエサ取りとして釣り人には蛇蝎のごとく嫌われるフグですが、果たして食べることはできないのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

クサフグの産卵がピーク

しばしば「ペンギン」に例えられる愛知県の「羽」に相当する知多半島。その先端に位置する愛知県南知多町の海岸で、クサフグの群れが産卵のため波打ち際に大量に押し寄せる現象が見られています。

クサフグの産卵は毎年5月から7月上旬に観察されており、満潮の2~3時間前になると大小様々なクサフグが海岸の波打ち際に集まって一斉に産卵するようすが見られます。

最も身近なフグ『クサフグ』の産卵がピーク 小さい身体に猛毒あり?産卵のため接岸するクサフグ(提供:茸本朗)

産卵ではまずメスが浅瀬の小石や貝殻の隙間に卵を産み付け、続けてオスが尾びれで激しい水しぶきを上げながら放精し、受精させます。このとき、放出された精子で海面が白く染まることもあります。

南知多用周辺では、例年満月と新月の前日または前々日に産卵のピークを迎えるのだそうです。(『「満月と新月の前が産卵ピーク」 海岸にクサフグの群れ 愛知』毎日新聞 2021.5.26)

クサフグってどんな魚?

クサフグは体長約15cmほどの小型のフグで、背面が深緑色をしており、その色味を草の色に例えたのが名前の由来となっています。砂地を好み、砂に潜る習性があり、夜間などはその状態で休息すると言われています。

最も身近なフグ『クサフグ』の産卵がピーク 小さい身体に猛毒あり?クサフグ(提供:PhotoAC)

クサフグは主に浅い海域に生息し、ときに群れをなして河口や淡水域にも入り込みます。そのため岸からの釣りではたいへん馴染み深い存在なのですが、彼らは動物性の餌なら何でも口にする上、鋭い歯で糸を噛み切ってしまうため、釣り人にはひどく嫌われる存在でもあります。

フグには空気で膨らむタイプと水で膨らむタイプがいますが、クサフグは空気を吸って膨らむタイプです。そのため釣り上げると威嚇のために大きく膨らみ、その結果リリースしても腹の中に吸い込んだ空気が邪魔をして、なかなか水中に帰っていけないユーモラスな姿を見せることもしばしばです。
  

クサフグって食べられないの?

超高級魚のイメージが強いフグ。そのためフグはしばしば「レアな魚」と思われていますが、ことクサフグに関しては上記の通り身近な場所に生息するため、レア感はまったくありません。

そのため、もし食用にできれば非常に有益なように思えますが、実際はクサフグが食用にされることはまずありません。その理由はサイズの小ささ、そしてそれに見合わない毒性の強さです。

最も身近なフグ『クサフグ』の産卵がピーク 小さい身体に猛毒あり?クサフグは小さい(提供:PhotoAC)

クサフグは小さいながらも筋肉以外のほぼすべての部位に強烈な毒をもっており、また個体によっては筋肉自体も弱毒を含むとされます。専門知識を持つ人が苦労しながらさばいても、可食部が少なすぎるのでその手間に見合うほどの価値がないのです。

ただ、クサフグは食用にすること自体は禁止されておらず、釣り人や漁師の間にはクサフグを調理して食べる人もいます。その味は淡白ながら、身が締まっており、サバフグのような水っぽさもなくとても美味だそうです。ただもちろん、素人料理は厳に慎まれるべきでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>