インド洋で生きた化石「シーラカンス」が漁獲 食べたら美味しいの?

インド洋で生きた化石「シーラカンス」が漁獲 食べたら美味しいの?

インド洋で、生きた化石として広く知られるシーラカンスが漁獲されました。大きくて肉量も多く食べでの有りそうな魚ですが、実際のところ味はどうなのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

「生きた化石」シーラカンスが漁獲

先日、「生きた化石」として知られる巨大魚シーラカンスが漁獲され、話題になっています。シーラカンスが水揚げされたのはインド洋の島マダガスカルの沖合。実は本種の生体が初めて発見された土地でもあります。

インド洋で生きた化石「シーラカンス」が漁獲 食べたら美味しいの?シーラカンスの標本(提供:PhotoAC)

かつてこのシーラカンスは、化石は発見されるものの生きている個体が見つかっておらず、現代の魚類とも大きく異る風貌から、約6500万年前に絶滅した古代の魚と思われていました。

しかし1938年にマダガスカル島沖で発見され、現在も化石になった個体とほぼ同じ形状を保ちつつ、現生種として存在していることがわかったのです。それ以降も単発的に捕獲されてきており、今回もそのひとつとなります。(『インド洋で地元漁師が「生きた化石」シーラカンスを生け捕り!』日刊ゲンダイ 2021.5.20)

シーラカンスとはどのような魚か

シーラカンスとは実は単一種の名称ではなく、シーラカンス目というグループに属する魚の総称です。その殆どは6500万年前の隕石衝突によって絶滅した化石種であり、現生種はインド洋に生息しているラティメリア・カルムナエと、インドネシアに生息するラティメリア・メナドエンシスの2種のみだと言われています。

インド洋で生きた化石「シーラカンス」が漁獲 食べたら美味しいの?ヒレの形が独特(提供:PhotoAC)

いずれも水深200~1000mの深海に生息している深海魚で、生け捕りにしても水族館などで飼育展示することは難しいため、我々一般人は標本しか目にすることができません。

古生代の約3億5000万年前に誕生して以来、現在に至るまでほとんど姿を変えていないことから「生きた化石」とされています。

シーラカンスは食べられる?

今回漁獲されたシーラカンスは、サメ漁の網にかかってきたものだそうです。シーラカンスを狙った漁業は存在せず、深海魚ということもあり捕獲されることは非常にまれです。

1mを超える大きな魚のため食べ出がありそうに見えますが、実際に食用にされることもないことはないといいます。しかしシーラカンスには多くの深海魚に共通する「体脂肪を多く含む」という特徴があり、これが食材としての価値を大きく毀損しています。

インド洋で生きた化石「シーラカンス」が漁獲 食べたら美味しいの?ワックスエステルを多く含む魚の代表・アブラソコムツ(提供:茸本朗)

深海魚にはアカムツ(ノドグロ)やギンダラのように、体脂肪が豊富でトロのように美味しい魚もありますが、シーラカンスの脂肪はそれらの魚の油脂分とは異なり、人間が消化できない「ワックスエステル」です。そのため不用意に食べるとひどい下痢に見舞われたり、肛門から油が漏出することが起きうると考えられます。

したがって、万が一シーラカンスの肉を手に入れる機会があったとしても、食べることは避けたほうがいいでしょう。

食べるよりは研究機関に回したい魚といえますね。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>