とても身近な魚『ハゼ』の保護活動が行われるワケ 気づけば高級魚に?

とても身近な魚『ハゼ』の保護活動が行われるワケ 気づけば高級魚に?

釣りの対象や正月用の食材として人気の高いマハゼ。身近な海にも多い魚ですが、しかし近年は生息数の減少も指摘されています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

中海でマハゼ陸上養殖活動

鳥取と島根にまたがり、日本有数の規模を誇る汽水湖・中海。その鳥取側の水域で、地元の高校生が参加した、養殖用マハゼ稚魚の採取体験が実施されました。

マハゼはかつての中海ではとても馴染み深い魚でしたが、今では特に鳥取側で激減し、その復活が試みられています。

とても身近な魚『ハゼ』の保護活動が行われるワケ 気づけば高級魚に?釣り上げられたマハゼ(提供:PhotoAC)

鳥取県の水産試験場と地元企業が共同で3年前から、マハゼの陸上養殖の試験を続けていて、今回獲られた稚魚もその養殖試験に提供される予定だといいます。(『「地元の魚食文化を守りたい」中海のマハゼ復活めざし高校生も一役 養殖へ稚魚を採取(鳥取・境港)』さんいん中央テレビ 2021.5.20)

天ぷらの最高級魚・マハゼ

マハゼはその名前の通り、ハゼ類の代表種と呼べるもの。全国の浅い海や汽水域に生息し、ときに純淡水に入り込むことのある、環境適応力の高い魚です。

小魚で大きくても20cmほどにしかならず、またほとんどの個体は1年で死んでしまう年魚です。しかしその味は極めてよく、古くから食通たちを唸らせてきました。

とても身近な魚『ハゼ』の保護活動が行われるワケ 気づけば高級魚に?調理されるマハゼ(提供:PhotoAC)

マハゼは上品な白身魚で皮に独特の風味があり、出汁がよく出るのが特徴です。加熱すると魅力が存分に発揮され、とくに江戸前の天ぷらだねには欠かせない存在でした。また干したものは雑煮や甘露煮の素材として、全国各地で非常に珍重されています。

東京湾では、屋形船で乗客にハゼを釣らせ、その場ですぐに天ぷらにしてくれるようなサービスも数多く存在しています。需要はまだまだ高いものの、ハゼ漁の専門の漁師が減り、また小魚であるために調理技術に熟練を要すことも、今ではスーパーなどではなかなかお目にかかれない魚になりました。

ハゼの産卵地が減少

その一方で「釣りの対象」としては馴染み深い存在でもあるマハゼ。貪欲な性質で、その大きな口で餌を見境なく食べます。そのため初心者でも簡単に釣れ、釣魚としての人気は高い魚です。

しかし、上記の中海のように、近年では減少が著しい場所も多くなっています。彼らが生息し産卵を行う砂地の浅場が、埋め立てやヘドロの堆積によってどんどんなくなってしまっているためです。

とても身近な魚『ハゼ』の保護活動が行われるワケ 気づけば高級魚に?マハゼの天ぷらが食べられなくなる?(提供:PhotoAC)

今ではいわゆる「ハゼの天ぷら」も、メゴチなど別の魚を代用したものが増えているといいます。もしかするとそのうち「マハゼの天ぷら」は庶民には手が届かない存在になってしまうかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>