今さら聞けない『エンガワ』の正体 正解はサカナが持つ「担鰭骨」

今さら聞けない『エンガワ』の正体 正解はサカナが持つ「担鰭骨」

回転ずし店で流れている「エンガワ」。サカナに詳しい人ならご存じかもしれませんが、どんな食材なのか知らない人も多いかもしれません。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

よく目にする「エンガワ」

私たちの身の回りには言葉は知っていても、その正体を知らないものや、見たことはあっても名前を知らない物が数多く存在します。

例えば、

「豆苗」って育つと何になるの?

ビル街でよく見かける「定礎」って何?

かずのこって何の卵?

など、絶対に見たことがあるのに、聞かれると「なんだっけ……?」となるものが意外にも多いものです。

その中の一つにお寿司のネタである「エンガワ」も含まれていることでしょう。確かに「あれはサカナのどの部位?」「どんなサカナの部位なの?」と知らない人も多いのではないでしょうか。

エンガワの正体

サカナに詳しい人や釣り人からしたら、知っているのは当たり前なのかもしれませんが、実は「エンガワ」のこと知らない人はたくさんいます。

まず「エンガワ」とはなにか。

「え、サカナの名前じゃないの?」

そう思っている方、じつは「エンガワ」はサカナの名前ではなく、あるサカナの「部位」を示していることを覚えておきましょう。

そして、そのサカナの正体は、ヒラメやカレイ。

しかし、【エンガワ=ヒラメorカレイ】なのではなく、「エンガワ」はヒラメやカレイが持っている「ある器官」のことを指しています。

今さら聞けない『エンガワ』の正体 正解はサカナが持つ「担鰭骨」エンガワの持ち主(出典:PhotoAC)

エンガワの正式名称

ではエンガワはどんな部位なのか。

まず、エンガワの正式名称は【担鰭骨 (たんきこつ)】 と言います。

ヒラメやカレイを想像してみて下さい。体の周りに大きくて立派なヒレが付いていますよね。エンガワはその大きくて立派なヒレを動かすための筋肉なのです。

ではなぜ、たんきこつではなく、「エンガワ」と呼ばれるようになったかというと、その理由には諸説ありますが、筋肉の形が日本家屋にある縁側に似ていることに由来している説が有力と考えられています。

たしかに、エンガワの方がキャッチーで使いやすいかもしれませんね。

また、ヒラメとカレイのどちらから取れたものでも「エンガワ」と呼びますが、お寿司屋さんで「エンガワ」と呼ばれているものは、基本的により大型に育つヒラメのものを指しています。

取れる量はほんのわずか

ヒレを動かすための筋肉であるエンガワは、実は1匹のサカナからそこまで多くとることができません。ヒラメ1匹から取れるエンガワは、なんとわずか「4貫分」なのです。

そのためエンガワはとっても貴重な部分で、お店のランクにもよりますが、かなり高値で提供されていることが多いです。大トロに匹敵するほどの値段で売られていることもあるようです。

ここで「ん?エンガワってそんなに高価なネタだったっけ?」

そう思った人も多いでしょう。では、回転寿司で提供される「エンガワ」がなぜ安価なのか説明していきます。

回転ずしのエンガワは…

「エンガワは高級品」であると先ほど述べましたが、一皿100円の回転ずしでエンガワを食べたことのある方も多いかと思います。実は回転ずしなどの安価なお寿司屋さんで「エンガワ」として提供されているものは、ヒラメからとれたエンガワではありません。

その正体は、主に「カラスガレイ」や「オヒョウ」という、かなり大型に成長するカレイのエンガワです。

カラスガレイからエンガワをとる場合、20〜60貫分も取ることができます。ヒラメのエンガワに比べて、5〜15倍もの量を取ることができるため、回転ずしでは安く提供されているのです。

安いエンガワはまずい?

では、「安価なエンガワはまずい」と思うかもしれませんが、一概にそうとは言えず、「カラスガレイのエンガワの方が脂が多く、より濃厚な味がする」といって安価なエンガワを好む人も少なくありません。

高級なヒラメのエンガワは安価なものに比べて脂が少なく、より歯ごたえのある食感が特徴的です。より脂っこいほうが好き!という人もいれば、脂っぽいから嫌い!という人もいます。

好みは人それぞれなので、まずは両方を食べてみることをお勧めします。

エンガワにハマるかも?

よく分からない食材だからと敬遠している人も多いかもしれない「エンガワ」。しかし、コリっとした歯ごたえと、口の中に広がる濃厚な味わいを知らないのは非常にもったいないです。

まずは回転ずしでどんな味なのか、食べてみてください。そして、機会があれば、高級なヒラメのエンガワにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

きっとその食わず嫌いから脱却できることでしょう。

<近藤 俊/サカナ研究所>