網走湖の『シラウオ』漁が5年ぶり再開 高級食材が低価格のワケとは?

網走湖の『シラウオ』漁が5年ぶり再開 高級食材が低価格のワケとは?

知名度の割に、口にする機会の少ない「シラウオ」。主要産地のひとつ、北海道の網走湖もその多くは高級料理店向けに出荷されるといいますが、今年に限っては様子が違うようです。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

5年ぶりにシラウオ漁が再開

日本最北の海・オホーツク海に隣接する北海道の汽水湖・網走湖で今年、5年ぶりにシラウオ漁が再開されました。

網走湖の『シラウオ』漁が5年ぶり再開 高級食材が低価格のワケとは?シラウオ(提供:PhotoAC)

全国的にもそれほど産地は多くないシラウオですが、北海道内で水揚げされるシラウオのおよそ9割が網走湖産の物となっており、主要産地のひとつ。かつては盛んに漁獲されていたのですが、2016年の台風の影響で水が濁り、資源量が減少。やむを得ず漁を休止していました。そして今年、休漁の甲斐もあってか資源量が無事回復し、いよいよ再開の運びとなったのです。

高級シラウオが格安で?

シラウオは非常に鮮度落ちが早く、漁獲後の管理がとても難しい魚とされています。気温が低い北海道では、本州以南の産地と比較すると鮮度保持が容易であるため、北海道産のシラウオは味がよく高品質であるとされます。

その中でも網走湖産のシラウオは最高級品とされ、例年では水揚げのほとんどが本州の料亭などの高級料理店に出荷されていたそうです。しかし今年は、新型コロナウイルスによる飛行機の大幅な減便で、主力だった関東圏の消費地への空輸が出来ない状態になってしまいました。

更に高級魚介類の需要減もあり、網走湖産のシラウオの在庫が道内でだぶつく形になってしまったといいます。

網走湖の『シラウオ』漁が5年ぶり再開 高級食材が低価格のワケとは?シラウオの天ぷら(提供:PhotoAC)

そこで、こんなときだからこそ、普段シラウオを口にすることが少なくなじみが薄い道民にも食べてもらおうと、地元漁協が札幌の飲食店と協力し、シラウオを使った料理をお手頃価格で提供することになったのだそうです。

札幌など、道内の消費地の料理店では現在、シラウオを使った様々な料理が提供され、話題となっています。普段は食べないシラウオの上品な美味しさに「食材としてポテンシャルが高い」といった声も上がっているそうです。(『5年ぶりに漁 再開 シラウオ使った驚きメニュー』HTBニュース 2020.10.19)

シラウオってどんな魚?

シラウオはサケ目シラウオ科の小魚で、河口付近や汽水域に多く棲息する魚。汽水と海水を回遊する性質があり、網走のシラウオは春に網走湖内で生まれ育ち、秋に海で越冬して、春に再び網走湖へ戻って産卵することが確認されています。

生息地

網走湖以外では、青森県小川原湖、茨城県霞ヶ浦、島根県宍道湖、中海などが主要産地として知られています。霞ヶ浦以外はすべて汽水湖であり、また霞ヶ浦もかつては汽水湖でした。この他、大きな川の河口などでも漁獲されています。

よく似たサカナ

シラウオはその見た目や色合いから、シラスやシロウオといった他のサカナと混同されていることもしばしばあります。シラスはイワシ類の稚魚で生きているときは透明ですが、シラウオは稚魚のときからやや白濁しています。

また「シロウオ」は名前こそよく似ていますが、ハゼ科に属する全く別のサカナ。こちらも汽水域に多く、各地の河口付近で漁獲されますが、旬は秋ではなく春となっています。

網走湖の『シラウオ』漁が5年ぶり再開 高級食材が低価格のワケとは?シ「ロ」ウオ(提供:PhotoAC)

<脇本 哲朗/サカナ研究所>