魚介で地域活性化:宮崎県日南市の『カツオ炙り重』 実は水揚げ日本一

魚介で地域活性化:宮崎県日南市の『カツオ炙り重』 実は水揚げ日本一

高知や鹿児島などの産地のイメージが強いカツオの一本釣り。しかし、この漁が日本で最も盛んな地域は、意外にも別の県にありました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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上り鰹が旬を迎えている

初夏の陽気を浴びて、街路樹が若葉を茂らせるころになると食べたくなる魚が、上質で美しい赤身が特徴のカツオ。初夏の時期はいわゆる「上り鰹」「初鰹」とも呼ばれ、俳句にも読まれるほど古くから愛された「日本の心」とも言える食材です。

魚介で地域活性化:宮崎県日南市の『カツオ炙り重』 実は水揚げ日本一流線型のシルエットが美しい(提供:PhoteAC)

南から水揚げが始まる上り鰹ですが、5月になると産地もかなり広がり、関東以西の太平洋側各地で水揚げされるようになります。カツオのたたきが有名な高知をはじめ、鹿児島、和歌山、伊豆など各地に名産地があり、関東の市場ではその時その時いちばん質が良いものを食べることができます。

実は「水揚げ日本一」の宮崎県日南市

sさて、関東の人に「カツオの産地といえばどこ?」という質問をしたらどうなるでしょうか。おそらく一番多い回答が、土佐造りのイメージも強い高知県かと思います。あとは鰹節で有名な静岡県や鹿児島県、日本三大朝市である勝浦の朝市でカツオが大量に販売される千葉県なども上位に来るでしょう。

魚介で地域活性化:宮崎県日南市の『カツオ炙り重』 実は水揚げ日本一カツオの代表料理「たたき(土佐造り)」(提供:PhoteAC)

しかし、実は意外にもこれらの県を凌ぐほどの漁獲量がある県があります。それは宮崎県。おとなり鹿児島県の影に隠れていますが、宮崎もカツオ漁がとても盛んな土地です。その中でも南部に位置する日南市は、なんと「近海カツオ一本釣り漁」の水揚げが日本で一番多い自治体となっています。

海岸線が長く多種多様な水産物が水揚げされる宮崎県でもカツオは特別な存在で、全漁連が認定する「宮崎のプライドフィッシュ」(春)にも「日南のカツオ」として選定されています。

「炙り重」で町おこし

そんな日南では、以前より「カツオメシ」などの郷土料理でカツオが食べられてきました。しかし水揚げこそ多いものの、市民にとってはある種当たり前の存在。全国的なB級グルメブームが起こり、「ご当地メニューで町おこし」の波が日南に及んでも、はじめは「宮崎だから地鶏かな」と考える人のほうが多いくらいだったそうです。

しかし、やはり「カツオ一本釣り漁水揚げ日本一」という事実をもっとプッシュしていくべきでは、という意見もあり、日南市では「カツオを軸にした新しいご当地グルメ」を開発しようという機運が高まりました。「日南新・ご当地グルメ開発プロジェクト委員会」が立ち上げられ、刺身や丼とは一線を画す斬新なメニューを考え出すべく、全市をあげての試行錯誤が行われました。(『経済効果は8億円!「炙り重」で生まれ変わった宮崎カツオ』DIAMOND online)

魚介で地域活性化:宮崎県日南市の『カツオ炙り重』 実は水揚げ日本一見た目にも豪華な「カツオ炙り重」(提供:ぱくたそ)

そして最終的に生まれたのが「日南一本釣りカツオ炙り重」。この料理では、2種類のタレで和えられたヅケのカツオと重箱に入ったごはん、副菜と香の物が、七輪とともに提供されます。カツオは生で食べてもいいのですが、七輪で炙ることで香ばしさが加わり、食感や風味の変化とともに楽しむことができます。

カツオはもちろん日南で水揚げされたもの、ご飯も宮崎産のものに限定されており、副菜も日南ならではのものを使うよう規定されているなど、日南のすべてが込められた一膳になっています。市内の加盟店舗で食べられるほか、東京の宮崎料理店でも提供されているそうです。(『日南一本釣りカツオ炙り重とは』日南一本釣りカツオ炙り重公式ホームページ)

徐々に知名度が上がっている「日南のカツオ」と「一本釣りカツオ炙り重」。旅行や外出が自由にできるようになった暁には、ぜひ食べに行ってみてください。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>