【釣った海水魚を飼育してみよう】水槽内の住みやすい環境作りについて

【釣った海水魚を飼育してみよう】水槽内の住みやすい環境作りについて

釣った海水魚を飼育するためのノウハウを紹介する『海水魚を飼育してみよう』。前回の『飼育しやすい釣魚』に引き続き、今回も株式会社海遊館・ニフレル事業部の専門家に魚にとって住みやすい水槽環境について伺ってみた。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)

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水槽内の環境は死活問題

人にとって身の回りの空気の善し悪しと同じで魚にとって水槽内の海水は、その状況によって、住みにくかったり、最悪の場合は魚体に影響を及ぼしたり、死んでしまったり・・・と言う事になってしまう重要な項目である。

そこで、今回はニフレル事業部の展示計画チームの百田和幸さん、澤竣介さんに「魚にとって住みやすい海水を作る」をテーマに取材をさせていただいた。

典型的な海水の汚れ

まず、魚を飼育していると水槽内の水が汚れる事は少なからず体験する。

その典型的な海水の汚れとは
・水の中に白いホコリのような物が浮く
・透明度は高くても水面にやたらと泡が目立つ
・全体に白濁する
など。

たとえば白いホコリのようなものは水カビであったり、水面の泡はタンパク質(プロテイン)の汚れであったりと、ちょっとした変化を常に観察しておく事で、早い段階で処理ができる。

水槽が立ち上がるまで1ヵ月?

百田さんによると、海水魚を飼育するのに水槽を準備する理想を言えば約1カ月を要すると言う。つまり、新しく水槽に入れた海水の中で、バクテリアなどの汚れを分解するような生物が安定するまでにかなり時間がかかる。

水槽に海水を入れてセットする事を「立ち上げる」と表現するが、約1カ月かけて「水槽が立ち上がる」、つまり水槽内の海水が安定するまで、魚などは入れずに海水を作るのが良いそうだ。

【釣った海水魚を飼育してみよう】水槽内の住みやすい環境作りについて水槽の立ち上げには時間がかかる(提供:pixabay)

魚の排泄物

魚はエサを食べた後に排泄するのだが、それは水槽内のバクテリアなどの働きによって、アンモニア→亜硝酸→硝酸塩と変化するのだが、実は変化が進むに従って毒素が少なくなる。なので、分解するバクテリアが存在しなかったり、少なかったりすると分解が進まず、毒素が多い物質が水槽内にたまる。

水槽が立ち上がった状態、つまり、今回のテーマである「魚が住みやすい海水」となっていれば、魚の排泄物も順に分解されていき、毒素の少ない状態を保つ事になる。

水槽の立ち上げを助ける役目を果たす物もある。それが専用に開発されて市販されている「水を作る薬品」であったり、自然のサンゴを利用した「サンゴ砂」などである。

サンゴ砂はサンゴの死骸であり、それを細かく砂状にしたものだが、死んでいてもその中にはバクテリアを住まわせていて、水槽内に砂と混ぜて入れたり、別にサンゴ砂のパックを入れたりする事で水槽の立ち上がり、及び、安定を維持してくれる作用がある。

濁りの原因

さて、ここまでは水槽を準備する段階での話だが、水槽が立ち上がって、実際に魚を飼育し始めた以降でも、急に水質が悪くなる事がある。これは海水の濁りとして出る事が多い。

原因としては、まず排泄物などを分解し海水を安定させてくれているバクテリアが死んでしまった時。バクテリアが死ぬと毒素の分解が進まない他に、バクテリアの死骸そのもので海水が濁ってしまう。

その他には、魚にあげたエサが原因となることも。それを避けるには、魚がエサを食い散らかさないようにエサを小さくしたり、少なめに投与するなどの工夫が必要だ。

プロテインスキマー

魚の食べ残しや排泄物の中でタンパク質などが溜まってくると白濁したり、泡が消えにくかったりする。このタンパク質を除去するのが、ろ過槽とともに使用するプロテインスキマーと呼ばれる装置だ。プロテインとはタンパク質の事で、スキマーは液体の中の不純物などを取り除く装置の事。

【釣った海水魚を飼育してみよう】水槽内の住みやすい環境作りについてプロテインスキマーのシステム(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

タンパク質を取り除く方法、システムは装置によっていろいろな工夫がされている。簡単なのは装置の中に微細な泡を発生するエアーストーンが入っていて、エアーを送る事で微細な泡によってタンパク質(プロテイン)を持ち上げて上部で除去できるシステム。海水魚飼育での独特の装置と言える。

ほかにもいろいろとシステムが違うタイプのプロテインスキマーがあるが、単体で購入するとかなり高価。安価なのはやや小さな水槽(60cmまで)向けのろ過槽とプロテインスキマーがセットになっている商品がオススメだ。

【釣った海水魚を飼育してみよう】水槽内の住みやすい環境作りについてプロテインスキマーがセットのろ過槽(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

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