潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味

潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味

潮干狩りの代名詞とも言える「アサリ」「ハマグリ」ですが、最近はめっきり数を減らしています。そこで、今回は次世代のターゲットとなりそうな貝を紹介します。

(アイキャッチ画像提供:山と酒と音と飯)

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その他 サカナ研究所

潮干狩りのターゲットに異変

春に楽しいアクティビティは色々ありますが、水温むこの時期、やはり潮干狩りは外せないものと思います。都会のそばにも潮干狩り場や潮干狩りのできる浜辺はたくさんあり、気晴らしの外出がてらさっと貝を掘り、そのまま晩のおかずに……なんてことも実は難しくありません。

さて、そんな気軽かつ馴染み深い楽しみである潮干狩りですが、「潮干狩りのターゲット」といえば何を想像されるでしょうか。きっと多くの人は「アサリやハマグリ」を思い浮かべるのではないかと思います。

潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味日本で「二枚貝」といえばアサリ(提供:PhoteAC)

しかし、実はいま、これらポピュラーな貝は大きく数を減らしており、とくにハマグリに至っては絶滅危惧状態にあります。とくに都心に近い潮干狩りポイントでこれらの貝を見つけるのは、いまやとても困難になってしまいました。(有料潮干狩り場にいるアサリは、別の土地から稚貝を運んで撒いているので、いわば「釣り堀」みたいなものです)

しかし、アサリやハマグリが姿を消してしまった浜にも、まだまだ潮干狩りのターゲットとなってくれる貝はあります。

新たなターゲット候補「シオフキガイ」

子供の頃潮干狩りをしたことがある人なら、獲れた貝を親や大人に見せたときに「それはアサリじゃないから食べられないんだよ」と注意された思い出があると思います。そのような「アサリじゃない貝」の最も代表的なものが、シオフキガイ。

潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味アサリより殻がふっくらしている(提供:山と酒と音と飯)

シオフキガイは「食べられない貝」として認識されていることが多いですが、実はこの貝は「青柳」「小柱」などの江戸前鮨ネタとしても知られるバカガイの近縁種。味もとても良く、もちろん食べてお腹を壊すようなことはありません。

ではなぜ食べられていないのか、それは「砂が抜けない」から。アサリは海水に2、3時間漬けておけば勝手に砂が抜けるのですが、シオフキガイは体内に噛んでいる砂の量が多く、貝の力だけでは全て抜くことができません。アサリと間違ったまま砂抜き処理を行い、一緒に調理して料理を砂まみれにしてしまった人も少なくないようです。このことから「シオフキガイは食べられない」と思い込まれてしまったのでしょう。

実際は上記のように美味しい貝であり、調理の前に一手間加えるだけでアサリと同じように食べることが可能です。採るのは大きなもの(殻長3cm以上が目安)だけにして、持ち帰ったらすぐに酒蒸しにしてむき身にし(茹で汁は砂を濾してとっておく)、ボウルに溜めた水の中でよく洗います。できれば外套膜(身についているびらびらしたもの)をひっくり返して洗うとなお良いです。

何度か水を変えて洗い、砂を落とし終わったら先程の茹で汁と合わせ、調理に使います。貝らしい濃厚な旨味と香りがあり、アサリにも負けない味です。

潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味アサリの代わりに深川めしに使っても美味(提供:山と酒と音と飯)

ターゲットは柔軟に

東京湾奥ではこのシオフキガイのほか、ホンビノスガイという外来二枚貝もたくさん採れ、味が良いです。この2種は東京湾の潮干狩りの主役と言ってもいいと思います。

場所によっては、砂に埋れたカキがたくさんいるところもあります。カキは本来干潟のような浅瀬を好み、砂に埋もれて育つカキは味がとても良いのが特長。水質がある程度良いことが前提ですが、狙ってみるのも面白いと思います。

このほか、アサリを食害することで知られる「ツメタガイ」や、サザエの代用に用いられるほど味の良い「アカニシ」など、巻き貝も立派なターゲット。玄人向けのターゲットですが、見つけたときの感動はひとしおです。

潮干狩りの次世代ターゲットは『シオフキガイ』? アサリ同様の美味つるっとした見た目がきれいなツメタガイ(提供:野食ハンマープライス)

このように、干潟にいる美味しい貝はアサリやハマグリに限らずたくさん存在します。数が減ってしまったものを追いかけるより、たくさん棲息し、かつ美味なものを狙っていくというのも正しい姿勢ではないかと思います。

ただ、これらの貝も棲息地である干潟そのものが失われてしまっては、元も子もありません。潮干狩りを通し、その環境の素晴らしさや大切さを思うことができれば、それが一番素晴らしいことだと感じます。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>